冬は鑑賞に耐えるような花を見つけるのが難しい時期ですが、旧暦の正月あたりから春の訪れを告げるように咲き出す野草にフクジュソウ(Adonis ramosa)があります。黄色く目立つ花が咲き、正月に因んで、福を招き、長寿を寿ぐという意味から福寿草と名付けられました。別名を元日草、朔日草(ツイタチソウ)ともいいます。
草丈15~30cmほどのキンポウゲ科の多年草で、写真のような草丈に比して大きな黄色の花を咲かせます。
フクジュソウ属はかつては日本にフクジュソウ1種しかないと思われていましたが、染色体の研究や外部形態の比較が進み、フクジュソウ、キタミフクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、シコクフクジュソウの4種が日本に自生していることがわかりました。このうちフクジュソウとシコクフクジュソウは日本固有種で、フクジュソウは北海道と九州に、シコクフクジュソウは四国と九州に分布しています。
おめでたい野草とされるので、江戸時代からよく栽培され、たくさんの園芸品種が作り出されて観賞用に愛されてきました。
花の形がパラボラアンテナのようですが、花を含めた地上部全体が太陽の動きに合わせて回転する性質があって、太陽光を真正面から捕らえ熱を集めて花の内部を暖めていることがわかっています。
縁起のいい植物とされるのですが、全草に強心配糖体であるシマリン、シマロール、ソマリンなどの化合物を含んでいて、やはり強心配糖体を含むジギタリスと類似の作用を持つことが知られています。根と根茎を乾燥したフクジュソウコン(福寿草根)は生薬となり、強心・利尿薬としてジギタリスの代用として利用できますが、とても毒性が強く、用量を誤ると心臓麻痺で死亡する危険があるため、家庭や民間では決してうかつに使用してはなりません。
ところが春先の形態がフキノトウに似ているようで、山菜を摘む際にうっかり間違えて誤食して死亡事故が起こることがありますので要注意です。