BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

シマジリスミレ(スミレ科)

Viola okinawensis K.Nakaj., nom. nud.

シマジリスミレ

シマジリスミレは沖縄本島の内陸の石灰岩壁に生息する多年草です。本種の学名は正式な発表とされる条件が満たされていないために、「nom. nud. (= nomen nudum、裸名)」と付けられています。正式に発表されてはいないものの、保護の必要性から現状のまま環境省の絶滅危惧種IA類に選定されています。和名のシマジリは「島尻」で沖縄本島の南部を指す言葉です。

スミレ属の中でも、匐枝を伸ばして新植物体をつけるウラジロスミレ節(Section Sepentes)に属します。このグループはアジアの熱帯から亜熱帯に広く分布しますが、日本には沖縄県に本種を含めて3種だけが知られています。

シマジリスミレは高さ5cm程度の小型のスミレです。葉はハート形(心形)で幅1~2cmです。高さ10cmほどの花茎を伸ばし、幅2cmくらいで淡紫色から白色の花を咲かせます。閉鎖花は葉に隠れて多数できます。種子は長さ2mmくらいで、種子本体に対して1/3から1/4くらいの大きさのエライオソームがつきます。中西(2018)によれば、種子ははじけ飛ぶことはなくその場に落下し、アリによって運ばれることが示されています。実際、シマジリスミレを栽培していると鉢の中から多数の発芽が観察されます。

シマジリスミレは沖縄県では石灰岸壁に細々と生息していますが、栽培環境では地上匐枝を伸ばして小植物体をつけるので鉢いっぱいに増え、こぼれた種子からもたくさんの実生が発生します。研究者から提供いただいた時には石灰岩を混ぜた土に植えられていたのですが、石灰岩が無くても特に問題はないようです。シマジリスミレは石灰岩が好きと言うより、他の植物との競争には弱いけれどもアルカリ性に耐性があるのでライバルが少ない石灰岩地で生き延びた植物、ではないかと感じられます。

参考文献
門田裕一.2016.スミレ科 VIOLACEAE.改訂新版日本の野生植物3:大橋広好 他(編).pp. 209-227,平凡社,東京.
中島邦雄.1970.琉球植物覚書(三).北陸の植物 = The Journal of Geobotany.18(1): 7-14.https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/records/12376
中西弘樹.2018.琉球列島産のウラジロスミレ節3種の種子散布.植物地理・分類研究.66(2): 197-200.https://doi.org/10.18942/chiribunrui.0662-16

シマジリスミレの種子
鉢内のシマジリスミレの実生