BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

センブリ(リンドウ科)

Swertia japonica (Schult.) Makino

センブリ

センブリは日本、朝鮮半島に分布する越年草です。各地の山野に自生しますが、日本人の生活様式の変化に伴って山林、草原が管理されなくなった結果、数を減らしています。環境省のレッドリストには選定されていないものの、都道府県レベルで絶滅危惧種に選定しているところもあります。2023年11月時点で12の都府県で選定されており、当植物資料館のある京都府では京都府改訂版レッドリスト2022の要注目種に選定されています。

センブリは春に発芽し、翌年の秋、2年間で大きく育たなかったものはその次の秋に開花し、種子を残して枯れます。センブリは初め円形ないしは倒披針形の根生葉で過ごします。2年目の夏に茎をのばして線形の葉を出し、先端付近に密に花を付けます。開花期は一般に8~11月ですが、当館では11月半ばころに開花します。センブリの花冠は白色で紫色の筋があります。花冠は深く5裂し、基部には緑色円形の蜜腺溝が2個あります。蜜腺溝の周囲には細かな毛が生えています。一つ一つの花は直径2cm程度で小さいのですが、多数咲くことで見た目が華やかになります。

センブリは「千回振り出しても(煎じても)苦い」に由来する言われるほど、苦みの強い、しかも苦味に残留性のある植物として知られています。開花期の全草を採集、乾燥して薬用とします。現行の第18改正日本薬局方にも収載される重要な生薬です。薬用成分はスウェルチアマリンなどのセコイリドイド配糖体です。ドクダミやゲンノショウコのように民間薬として、苦味健胃薬、整腸薬として用いられました。センブリの別名「当薬」は「まさに薬である」の意味で、よく効いたことがうかがえます。難波恒夫『和漢薬百科図鑑 (保育社)』によれば、鎌倉時代以降に胡黄連[中国原産のオオバコ科(旧分類ではゴマノハグサ科)のコオウレンPicrorhiza kurroa Royle ex Benth.の根茎]の代用として用いられました。木下武司『歴代日本薬局方収載 生薬大事典 (ガイアブックス)』には、江戸時代には胡黄連の名称でセンブリが多数の民間療法書に記載されたことが書かれています。近年では、毛細血管拡張、毛乳頭細胞活性効果があるとして育毛剤に配合されています。上記『歴代日本薬局方収載 生薬大事典』には、22ページにわたってセンブリの歴史や名称、用途についての様々な考察が加えられており、センブリをはじめ日本薬局方に収載される生薬に興味のある方は一読をお勧めします。

センブリは山野草として鉢で栽培されることがありますが発芽しにくい植物でもあります。ポイントは種子入手後に直ちに播く(取り播きする)こと、種子が細かいので覆土せずに籾殻をかぶせることと、発芽、初期生育には十分な水分が必要なことです。鉢皿に水を貯める腰水や、潅水タイマーを用いて1日1回から数回の潅水を行うと容易に苗を得られます。植え替えが苦手なので苗の小さいうちに観賞予定の鉢に植え付けます。発芽には数年かかることもありますので、発芽せずに失敗したと思ってもあきらめずに2、3年は水やりを続けることも重要です。

花冠が7裂した花。雄しべの根元の薄緑の部分が蜜腺溝。
今年の春に発芽した苗。