ヒラミレモンは沖縄の方言で「シークァーサー」とよばれるミカンの仲間です。黄橙色の果実は 25g 程度で小さく、酸味が強いため、食酢のように果汁を利用します。この植物の方言名のシーは酸の意味で、昔、芭蕉布の洗濯のとき、布をさらすのにこの植物の未熟果を使用したことに由来します。
ヒラミレモンは奄美大島以南から台湾にかけての山麓に自生しています。高温で湿潤な気候を好み、このような気候では生育は非常に旺盛です。花は 3-4 月に咲き、果実は秋から冬にかけて実ります。現在栽培されているヒラミレモンは、野生の植物が突然変異したものを選抜した園芸品種です。
ミカン属( Citrus )で日本に古来より自生していたとはっきり言えるものは、現在のところタチバナ( C. tachibana )と、このヒラミレモンの 2 種だけです。タチバナは本州の愛知県以西から九州にかけて分布しています。日本には多くの Citrus 属が栽培されていますが、この 2 種以外はすべて外国から導入されたものや、交配して作出された品種、起源がはっきりしていないものです。 Citrus 属は栽培品種も多く、種の分類が非常に困難です。みかんといえばウンシュウミカン( C. unshiu )を思い浮かべる方も多いでしょうが、これは江戸時代初期、鹿児島県長島で中国から持ち込んだ Citrus 属の種子の中から偶発的に発生し、栽培されたといわれています。