BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

コルクガシ(ブナ科)

Quercus suber L.

コルクガシ

初代のコルクガシ2株は2017年、2018年の奇しくも同じ名前の台風21号で倒れてしまい、残ったどんぐりから第2世代を育成しています。この第2世代コルクガシに再びどんぐり(堅果)が付きましたので紹介します。(初代の記事はこちら

第2世代コルクガシは、それぞれの初代が倒れた翌春の2018年、2019年に園内数か所に直播しました。この中から2024年の5月に雄花が咲いている株があることに気が付きました。2018年にセミナーハウス前に播種した株と、2019年に2018年に倒れた株の跡に播種した株です。どんぐりが播種から5年程度で開花に至るというのは驚きです。1年遅く2019年に播種した株も2018年株と同時に開花したのは、倒れた初代の根を除去して土が良く耕されていたこと、2018年の株は剪定していますが2019年の株は自然樹形で放任していること、などから早く生長したためではないかと考えます。この時点では、雌花の存在は確認できませんでした。長さ5cm程度に伸びて目立つ雄花と比べて、推定5mm程度の雌花は大変見つけにくいのです。

最近になって、根元に植えたカラトリカブトを見学客に説明していると、目の前の2019年の株に直径1cm程度の小さなどんぐりが付いていることに気づきました。コナラ属にはシラカシやアラカシのように春に開花して同じ年の秋に成熟する1年のタイプと、ウラジロガシのように春に開花したあと同じ年の秋ではなく次の年の秋に成熟する2年のタイプがあります。コルクガシについて調べてみると開花から成熟まで1年の個体と2年かかる個体の両方が存在するコナラ属でも珍しいタイプだとわかりました。当株は写真の姿からあと2か月で成熟し落果するとは思えないので、2年タイプのようです。そうであればおそらく2025年の12月から2026年の1月ごろに成熟します。ただし、この1週間でほとんどが花序の根元から落ちてしまい、10月28日時点で残っているのは5、6個です。成熟に至るまでに全滅してしまうかもしれません。

コルクガシは日本国内ではあまり見られませんし、あっても大抵が巨木なので花を見ることは困難です。まだ木が小さいしばらくの間は脚立に上らずとも人の目線の高さで花やどんぐりを見ることができそうです。

コルクガシの雄花(2024年5月撮影)
セミナーハウス前の株(2018年に播種。3株を寄せ植え)
2018年倒伏株の跡の株(2019年に播種)

参考文献
鈴鹿紀(1996)続旅と植物.人文書院
JA Elena-Rossello et al. (1993) Ecological aspects of the floral phenology of the cork-oak (Q suber L): why do annual and biennial biotypes appear? Annals of Forest Science 50 Supplement : 114-121. https://doi.org/10.1051/forest:19930710
J. Pons and J.G. Pausas (2012) The coexistence of acorns with different maturation patterns explains acorn production variability in cork oak. Oecologia 169:723-731. https://doi.org/10.1007/s00442-011-2244-1