BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

コルクガシ(ブナ科)

Quercus suber L.

コルクガシ

<「ワイン」と「生ハム」を支える コルクガシ>

当館の中ほどに、樹齢50年以上にもなるコルクガシの大木があります。この樹は地中海沿岸地域の原産で、年の平均気温が14~20℃の暖かい気候を好みます。日本に初めて紹介されたのは明治時代で、暖かい太平洋側の林業試験場で試験栽培されたようです。しかしながら、日本ではあまり栽植されておらず、暖地にある植物園でみられる程度です。京都のような冬に冷えこむ地域で、しかも、このような大木は珍しいと思います。

コルクガシはその名のとおり、ワインの栓などに利用されるコルクが採れます。樹幹の表面には、厚いコルク層ができ、これを剥がし、くり貫いてコルク栓を作ります。このコルク層は再生するため、10年経てば再び収穫できます。コルクの主な産地であるポルトガルやスペインには、多くのコルク工場があります。

コルクガシの果実は、イベリコ豚に食べさせる「どんぐり」としても知られています。スペインでは、秋になると豚をコルクガシの森に放牧します。どんぐりを食べて太った豚は、どんぐりの風味がうつり、最高級の生ハムができます。「ワイン」と「生ハム」、スペインの食文化を、このコルクガシが支えています。

当館のコルクガシは樹高が10 m以上、幹の周囲が2 m以上になります。幹の表面に触れてみると、確かにコルクの弾力があります。5月頃に開花するのですが、樹高が高いため、なかなか気づきません。冬に入る頃、足元にどんぐりが落ちてきます。

※2018年、2019年のどちらも台風21号で、2本あった大木が相次いで倒れてしまいました。現在は残ったドングリから新たな木を育成しています。