BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

シマバライチゴ(バラ科)

Rubus lambertianus Ser.

シマバライチゴ

シマバライチゴは中国南部、台湾、タイ、ベトナム、日本の一部に分布する匍匐性または蔓性の木本です。日本では長崎県の島原市と大村市、熊本県の天草地方と球磨村にのみ生息することから環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類(VU)に選定されています。

葉には細かい鋸歯があり毛があります。茎は上方へ伸びて、やがて垂れ下がり地面を這います。地面についたところで根を出して新たな株を作ります。茎には鋭くかぎ状の棘があります。横に伸びた茎の先端に花序を付けます。花は直径1cmほどで、小さく目立たない8枚くらいの花弁を付けます。果実は液果で赤色です。本種の中国名は「高粱泡(gao liang pao)」といいますが、そのように言われてみると、小さな果実が集まる様はコーリャン(モロコシ)の泡のようです。

当館の個体は、熊本大学薬学部薬用植物園の方の案内で球磨村の果実を採集したものです。熊本大学の薬草データベースにもあるように、令和2年7月豪雨で生息地が壊滅してしまったということなので、にわかに貴重な植物となりました。ただし、現状のように放置気味にしてハウスの地面に根付くのに任せているうちは消滅する心配はなさそうです。

シマバライチゴは中薬大辞典によると根を高粱泡根、葉を高粱泡葉といいます。根には清熱や瘀を和ませる効果が、葉には外傷の出血や肺病の喀血を直す効果があるとされます。

参考文献
シマバライチゴ | 熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース (kumamoto-u.ac.jp) https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/006579.php

2016年に熊本県球磨郡球磨村で撮影したシマバライチゴ
生息地の全体(1)
生息地の全体(2)
果実