BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ラカニシキギ(ニシキギ科)

Salacia chinensis L.

ラカニシキギ

ラカニシキギは中国南部(広東省、広西チワン族自治区)からマレー半島、フィリピン諸島、インドおよびスリランカまで広く分布する、よじのぼり形の潅木です。幹は巻き付くことはありませんが蔓のように長く伸び、高さ4mにもなります。しかしながら、原産地から入手した直径15cmの太い幹を見ていますと、根元から先端までの長さは4mどころではなくもっとあるのではないかと思います。Salacia属はエングラー分類体系およびクロンキスト分類体系ではHippocrateaceae (科の和名はデチンムル科、ヒッポクラテア科またはグミカズラ科)でしたが、APG分類体系ではニシキギ科に含められました。和名にもニシキギの名前が付いています。「ラカ」の由来は不明です。中国名は「五层龙 wu ceng long (五層竜)」です。

ラカニシキギの茎は若い時には淡褐色でやがて濃くなります。太くなった幹を切ると、一見年輪のような不思議な模様が現れます。一周せずに途切れているので年輪ではないことは明らかですが、何に由来する構造なのか明らかにした文献は見つかりませんでした。しかし、フジの幹に見られる多重形成層と同じものではないかと考えられます。新鮮な樹皮の内皮や根は鮮やかな黄色です。葉は幅5~11cm、長さ2~5cmで倒卵形~楕円形、まばらな鋸歯があり、対生します。先述のように幹はつるのように長く伸び、15~30cmくらいまでの短い枝を出します。花は、つるの先の方から出る短い枝の葉柄に数個ずつ付きます。花の直径はおよそ1cm、花弁は5枚で黄緑色、雌しべは1個で円錐形、雄しべは3個です。果実は直径1.5cmで赤色、中に1つの種子があります。

ラカニシキギを初めとするサラシア属植物は、インドおよびスリランカで伝統的に薬用として糖尿病の初期症状に用いられてきました。有効成分として有名なのはインド産のサラシア・オブロンガ(Salacia oblonga Wall.)やサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata Wight)に含まれる、サラシノール(salacinol)や、コタラノール(kotalanol)などです。ラカニシキギにはネオコタラノール(neokotalanol)が含まれています。ネオコタラノールにも血糖値上昇を抑える効果が確認されています。