BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

リカニア・トメントサ(クリソバラヌス科)

Licania tomentosa (Benth.) Fritsch.

リカニア・トメントサ

<へんなものがでてきた!>

日本ではあまり馴染みのないクリソバラヌス科は熱帯を中心に17属500種以上があり、すべて木本で高木から低木まであります。今回紹介するリカニア属はクリソバラヌス科の中で最大の属で約3分の1の種が属しています。

2009年11月24日にインドネシアのボゴール植物園から頂いた種子を播いたところ2010年1月13日に発芽しました(写真1:1月15日撮影 樹高1㌢)。最初はなんの不思議も感じなかったのですが、何日たっても子葉がまったく展開しませんでした(写真2:1月26日撮影 樹高6㌢)。まるで葉緑素をもたない寄生植物のようでした。小さな白色の鱗片葉をつけているのですが、とても光合成を行っているとは思えませんでした。これはおかしいと思い調べてみると、クリソバラヌス科は無胚乳種子植物でした。おそらくエンドウやソラマメと同じく、子葉に栄養分を貯え子葉は地上に出ず、そのエネルギーで光合成せずに幹を伸ばしていたのでしょう。種子は卵形で長径は6㌢、短径は3㌢もあり、かなりのエネルギーを内蔵していると思われます。発芽後30日を超える頃から鱗片葉が大きくなり、普通の葉らしくなってきました(写真3:2月18日撮影 樹高25㌢)。その4日後には本葉が完全に展開しました(写真4:2月22日 樹高33㌢)。写真で見ると葉身は白色ですが、緑の葉身の上に多量の白い毛が密生しているために白くみえるのです。多分、光合成は始まっていると思います。それにしても、木本のリカニア・トメントサの生長は驚異的だと思いませんか。なお、この植物の果実はブラジルやギアナで食用にするそうです。