<早春を代表する花木のひとつ。果実は生薬「山茱萸」として薬用にする。>
春まだ浅い3月頃に、鮮やかな黄色の花を咲かせるのでよく目立ち、花木としてよく植栽される樹木にサンシュユ(Cornus officinalis)があります。
中国または朝鮮半島原産とされるミズキ科の落葉小高木で、日本には享保7年(1722年)に薬用植物として朝鮮半島から移入されました。
樹高は5mを超え、幹は径3cmほどになり、たくさん分枝します。葉は、幅3~5cm、長さ4~10cmほどの狭卵形あるいは狭楕円形で先端が尖り対生につきます。
3月頃まだ葉の出ない先に、前年枝の先に写真のような小花が20~30ほど集まった花序をつくります。小花は径4~5mmほどの両性花で花後に、径1cm、長さ1.5cmほどの楕円形の果実がなり、秋には赤く熟します。
春には黄金色の花が咲くためにハルコガネバナ(春黄金花)、秋には赤い果実がたわわに実ることからアキサンゴ(秋珊瑚)ともよばれ、春も秋も美しく彩られます。
観賞用にも美しい樹木ですが、果実は薬用として利用されます。
果実の中にある種子を取り除き、果肉を乾燥させた生薬を山茱萸(サンシュユ)と呼び、滋養、強壮、収斂、強精、止血薬として、補腎、疲労回復、腰痛や腰痛などに用いられます。
薬理作用としては、抗糖尿病作用、利尿作用、血圧降下作用などが知られています。
成分として、ロガニン、スウェロシドなどの苦味配糖体、モノテルペン配糖体、ウルソール酸やオレアノール酸などのトリテルペン類、没食子酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸類、タンニンや糖類を含むことが知られています。
八味地黄丸、牛車腎気丸、左帰飲などの漢方処方の構成生薬のひとつで、『神農本草経』の中品にも記載の見られる古くから知られた生薬で、現行の第十六改正日本薬局方にも収載されている生薬の一つです。