アカキア(アカシア)・マンギウムはモルッカ諸島からニューギニア、オーストラリアの南東部が原産の中高木です。ネムノキ科(Mimosaceae)とは、従来(「エングラーの分類体系」)のマメ科の内でアカシアやネムノキ(Albizia julibrissin)、オジギソウ(Mimosa pudica)など房々した花を付けるグループのことで、当資料館が現在採用している「クロンキストの分類体系」では狭義のマメ科(Fabaceae)と区別されます。しかし最新の、現在主流になりつつある「APG分類体系」では再びマメ科に統合されました。当資料館に3000種以上ある栽植植物の分類を突然切り替えると、私たち栽培者も混乱するので難しいのですが、遠くない将来にAPG分類体系に沿って切り替えていこうと考えています。
アカシアといえば庭木にするミモザ(正式には「フサアカシア」、Acacia dealbata)やギンヨウアカシア(A. baileyana)、あるいは属が違いますがニセアカシア(ハリエンジュ、Robinia pseudoacacia)のような羽状複葉をイメージしがちですが、このアカキア・マンギウムは披針形の大きな葉を付けます。他に園芸店で売られているアカシアにも(パールアカシア、サンカクバアカシアなど)単葉をつけるものがありますが、これらは仮葉(かよう)といって葉身が退化し葉柄が葉状になったものです。これら仮葉をもつタイプのアカシアでも、実生の小さい間は羽状複葉を出すので、種子から育てて羽状複葉から仮葉に切り替わるのを観察するのも面白いものです。アカシアの種子を上手に発芽させるには、紙ヤスリで表面を傷付けるか、または熱湯に浸けて一晩自然に冷ました後に土に播きます。
アカキア・マンギウムの花序は枝先に近い葉の腋につきます。花序は長さおよそ5cmの穂状で、個々の花の花弁は小さく、多数の雄しべだけが目立ちます。果実は莢果になります。莢果の長さはおよそ5cmでコルク抜きのようにねじれた奇妙な形をしています。完熟すると莢が割れて黒色の種子が出てきます。種子の周りにはひも状の黄色い仮種皮がついており、種子は莢からぶら下がります。
アカキア・マンギウムは生長が早く熱帯各地、特に東南アジアで大規模に栽培されます。材は用材として、または製紙用のパルプとして利用されます。