ムクナ・カロフィラは中国の雲南省に分布する大型のつる植物です。中名は美叶油麻藤(mei ye you ma teng)で、叶は葉の簡体字ですから葉が美しいトビカズラ属植物の意味です。
本植物は(公社)日本植物園協会の海外事情調査に職員が参加して、1997年に中国から入手したものです。なぜかヤマノイモ属の一種Dioscorea sp.という名前で(おそらくどこかのタイミングで本物のDioscorea sp.とラベルが入れ替わったのでしょう)、ずっと樹木園の片隅で放置されていました。2011年に樹木園整理を行ったため鉢上げして屋外バックヤードで管理していましたが、2016年に初めて蕾を発見したこととトビカズラMucuna sempervirens Hemsl.と葉の形が似ていることからトビカズラ属の一種Mucuna sp.へと変更しました。屋外では冬の寒さで蕾が枯れるので、2017年に無加温ビニルハウスへ移動して2023年にやっと開花しました。開花したので同定を行い、ムクナ・カロフィラだとわかりました。
ムクナ・カロフィラはトビカズラ(リンク)とよく似ていますが、花のサイズが一回り小さい長さ6cmくらいであること、葉をよく見ると表面に絹糸状の毛があることが異なります。昨年は花序が少なかったのでわかりませんでしたが、今年はたくさん咲いたのでトビカズラと同じような不快な匂いが漂います。
ムクナ・カロフィラ(左)とトビカズラ(右)の花
ムクナ・カロフィラ(左)とトビカズラ(右)の葉
ムクナ・カロフィラ(左)とトビカズラ(右)の葉の拡大。ムクナ・カロフィラの葉には細かな毛がある(葉の左側がわかりやすい)