マルバハタケムシロは日本の奄美、沖縄(久米島)に固有の小型の多年草です。ハタケムシロとは水田のあぜなどに見られるミゾカクシ(Lobelia chinensis Lour.)の別名です。オーストラリアに生息するHypsela sessiliflora E.Wimm. (= Isotoma fluviatilis (R.Br.) F.Muell. ex Benth.)に似る(J.Murata, 1992)とされています。
マルバハタケムシロは海岸近くの風衝地に生息します。地面を這い、よく分岐します。葉は円形で小さな鋸歯があります。またやや肉厚で光沢があり、長さ6mmほどです。花は葉腋から1つ伸ばします。花は直径1cm程度で、花弁は白色または淡紫色です。2016年11月に紹介したサクラダソウ(Lobelia nummularia Lam.)とも似ていますが、ずっと小型です。果実は小さく、直径2mm程度まで育ったものしか見たことはありません。
鉢植えで育てる場合、土と鉢縁に隙間(ウォータースペース)をつくると、茎は鉢縁を乗り越えられないのでよくまとまりますが、やがて調子が悪くなります。縁すれすれまで土を入れ、鉢からはみ出るままに育てたほうが元気です。鉢からはみ出た部分を新たな鉢に這わせたり、切り取って挿し木をするとますます元気になります。自生地では開発等の影響を受けて絶滅危惧IA類(EN)に指定されていますが、自然にのびのびと育てないと真価を発揮しない、まさに野生児のような植物です。
参考文献:J.Murata (1992) Morphology and Chromosome Number of Lobelia loochooensis Koidz. J. Jpn. Bot. 67: 282-285