BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ヒコウキソウ (ハバビロホオズキハギ)(マメ科)

Christia vespertilionis (L.f.) Bakh.f. ex Meeuwen

ヒコウキソウ (ハバビロホオズキハギ)


植物の話あれこれ 41
葉が飛行機に似る「ヒコウキソウ」

この植物の葉は、通常3枚の小葉からなる複葉である。この葉の形が独特で、風に揺れると、飛行機が飛んでいるように見える。このことから、「ヒコウキソウ」と呼ばれている。

3枚の小葉のうち、両側2枚の小葉のない先端の小葉だけの葉もある。この先端の小葉は、「頂小葉」と呼ばれる。この頂小葉は、飛行機の主翼の形に似ている。

この植物の学名(種名)”vespertilionis”は、「コウモリの」という意味である。中国では、この植物を「蝙蝠草」と呼んでいる。やはり、この植物の葉の形が、コウモリに似るところから、そのように呼ばれるのであろう。この植物のシノニム(Synonym;同種異名)に”Christia lunata Moench.”がある。この種名”lunata”は、「月形の、弦月形の」という意味がある。頂小葉が、三日月に似ていることによるのであろうか。当館では、4年ほど前から、この植物を栽植しているが、見学者に好評である。葉を「栞」にして持ち帰っていただいている。

(註:掲載当時(1999年)の情報で、現在では栞の配布は行っていません)

この植物は、中国南部、インドシナ半島南部に分布する一年草である。山地の傾斜した草地や低木地、やぶに生える。茎は、細長く直立し、高さは50~90cmほどである。夏から秋にかけて、総状の花序に白い花冠の小さな花を着ける。10~11月頃、結実する。

中国では、夏~秋に、この植物の新鮮な全草を採集し、日干しする。これを「双飛胡蝶(ソウヒコチョウ)」と呼び、薬用に用いる。この生薬を「酒に浸して服用すると筋肉を強壮にする」、「水で服用すると肺結核や、気管支炎、扁桃腺炎などを治す」と記載されている。また、血液の活性を高めたり、循環をよくする作用がある。このことから、風邪を治したり、炎症の腫れを消したりするのに用いられる。また、葉は、外用薬として、毒ヘビの咬傷や打撲傷を治したり、骨折を治療するために用いられる。

Christia属植物は、和名で、「ホオズキハギ属」と呼ばれている。このことから、「ヒコウキソウ」も、別名で、「コウモリホオズキハギ」と呼ばれている。この属に属する植物で、日本にただ1種だけ分布する植物がある。「ホオズキハギ」 ”Christia obcordata (Poir.) Bahn. f.”である。琉球諸島に分布している。花が終わったあと、萼が大きくなって、「ホオズキ」に似た形になるところから、このような名前がつけられたようである。「ホオズキハギ」も、「ヒコウキソウ」と同様に、葉は互生し、3枚の小葉からなる。頂小葉は、倒三角形で、2枚の側小葉は、倒卵形である。これでは、飛行機のイメージを感じさせない。

「ホオズキハギ」は、琉球諸島だけでなく、台湾や中国の広西、広東、福建省など華南、華東地方にも分布している。この植物は、中国名で、「舗地蝙蝠草」と呼ばれている。地面に伏す性質があることから、このように呼ばれているのだと思う。中国では、この植物の全草を、「半辺銭(ハンペンセン)」と呼び、薬用として用いられている。排尿障害や、急性および慢性の腎炎、尿道炎、吐血、喀血、小児のひきつけなどに用いられる。また、外用薬として、打撲傷や皮膚化膿症、疥癬、ヘビの咬傷などに用いられる。

ホオズキハギ属植物は、中国、インドシナ半島、マレイシア、オーストラリアなどに、12種ほど分布していることが知られている。

(「プランタ」研成社発行より)