BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

トカドヘチマ(ウリ科)

Luffa acutangula (L.) Roxb.

トカドヘチマ

ウリ科に属するヘチマ属は、熱帯あるいは亜熱帯の原産とされ、8種が知られていますが、そのうち野菜として栽培されるのはヘチマと、今回取り上げたトカドヘチマの2種類です。

ヘチマと言うと夏から秋に、50cmを超える円筒形の大きな果実がなっているのよく見かけます。スポンジ状の繊維を果実からとってヘチマたわしにしたり、根元から数十cmほどで切って上がってくるヘチマ水を集めて化粧水として利用したり、昔からおなじみの植物です。しかし繊維をとる目的のヘチマは日本で品種改良されたもので食用とはせず、成長しても繊維の発達しないものが熱帯にあり、これが食用とされます。日本でも沖縄県や鹿児島県ではこの食用ヘチマが栽培されています。

一方、トカドヘチマはヘチマと近縁で、ヘチマよりやや小ぶりで棍棒のように細みの果実をつけますが、10本の縦の稜線があるのが特徴です。輪切りにすると10個の角のように見えるので「十角糸瓜(とかどへちま)」と呼ばれています。また稜線のぐあいがオクラに似ているせいか、英語ではChinese okraとよばれます。

ヘチマと同じように、淡黄色で5弁の雌雄異なる花をつけます。ヘチマは雄花の雄蕊が5本であるのに対してトカドヘチマは3本であることが異なっています。花は夕方から咲きだして夜の間だけ咲き翌朝にはしぼみます。受粉可能なのは1日だけで、媒介昆虫の少ない所では人工授粉が必要とされます。

高温多湿を好み、害虫や病気にも耐性があるので、インドや東南アジアではさかんに栽培され、カレーに入れられたり、蒸しものや煮物にして食べられます。中国では広東料理によく使われて「広東糸瓜」と呼ばれているようです。日本でも沖縄県、鹿児島県や熊本県で栽培されて、みそ汁の具や煮物・炒め物にして食べられています。
トカドヘチマの雄花
トカドヘチマの雌花
ヘチマの雄花
トカドヘチマの果実の断面
市場で売られるトカドヘチマ (1999年タイで撮影)