BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

トクサ(トクサ科)

Equisetum hyemale L.

トクサ

<土壌からケイ酸を吸収し細い茎を強化する トクサ >

トクサは北半球の温帯に広く分布する常緑のシダ植物で、日本では本州の中部以北、北海道に分布しています。茎は直立して枝はなく、茎の先端に写真のような胞子嚢穂をつくります。日本では鑑賞用として、日本庭園に植えられたり、鉢で栽培されることもあります。栽培品には、茎が黄色になるもの、黄色の虎斑が入るものなどがあるようです。トクサの表面はざらざらしており、茎を煮て乾かしたものを使って、木工品などを磨くのに利用していました。砥草(トクサ)という和名がついたのはこのためといわれています。

トクサの表面がざらざらしているのは、表皮の細胞にケイ酸を含んでいるためです。ケイ酸は土壌の主要な構成成分で、その大半は水に溶けない形態で存在するのですが、一部のケイ酸は土壌水に溶けています。さらにこのケイ酸は、濃度が高くなると固化する性質をもっています。ケイ酸を根からほとんど吸収しない植物は多いのですが、トクサはこのケイ酸を吸収します。そして、ケイ酸を茎に蓄積して固化させ、丈夫な茎をつくるのに利用しています。細い棒のような茎が、折れずに立っていることができるのはこのためです。実は皆さんよくご存知のイネ( Oryza sativa )も、この方法で葉を丈夫にしていることが知られています。そういえば、イネの葉もざらざらしています。

トクサは薬用としても利用され、生薬名を木賊(もくぞく)といい、利尿作用がある他、下痢や眼病にも利用されます。夏や秋に地上部を刈り取って、乾燥させたものを利用します。