クロウメモドキ属は、温帯から熱帯に150種ほどが知られ、落葉性あるいは常緑の高木、あるいは低木と様々ですが、セイヨウイソノキはイギリスを含むヨーロッパの湿った泥炭地などを中心にスカンジナビア南部、アフリカ北部、西アジア、中央シベリア、北米などに分布する落葉性の低木です。北米には200年ほど前に生垣などにするために移入されたと言われています。
樹高は3~5mほどになりますが枝葉は密になり、剪定にもよく耐えて秋になると美しく紅葉するので生垣などに植栽されます。葉は8~15mm程度の葉柄があり、長さ5~7cm、巾3~5cmていどの卵形から楕円形で、滑らかな茶色の樹皮を持ち、切ると内皮が明るい黄色に見えます。5月から6月頃に直径3~5mm程度の白からうす緑の小さな花を葉元に房状に付け、花後直径1cmほどの丸い液果が付きます。液果は緑色から赤色を経て熟すと黒色となります。
クロウメモドキ属の数種類は樹皮に瀉下作用をもつアントラキノン配糖体といわれる化合物群を蓄積するものがあり、これらが便秘の時の下剤として利用されてきました。セイヨウイソノキもその一つで、乾燥樹皮はフラングラ皮と呼ばれて欧州では中世から利用されてきたそうです。樹皮には3~7%ものアントラキノン類や、アンスロン、アントラノール、タンニンやフラボノイドを含んでいます。新鮮樹皮は最低1年間は乾燥されたのち、薬用に供されますが、これは吐き気を誘発するアンスロンやアントラノールを自然分解させて、薬用に適するようにするためだそうです。
北アメリカ太平洋沿岸地方原産のRhamnus purshianaの樹皮もカスカラサグラダと言われ同じように緩下剤として利用されます。
過去には下剤としてばかりでなく強壮剤や駆虫剤として使われ、外用薬として歯肉炎、頭皮の寄生虫退治などにも使われたようです。
またセイヨウイソノキからつくられる炭は上質で火薬製造に用いられたり、絵画に使う木炭として利用されてきました。また樹皮や葉からは黄色の染料が、未熟の果実からは緑の染料が取れるので染色に、さらに材は合板の材料などに利用されてきました。
薬用だけでなく、様々な用途に利用されてきた植物のようです。