BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ストロファンタス(キョウチクトウ科)

Strophanthus divaricatus (Lour.) Hook. et Arn.

ストロファンタス

植物の話あれこれ 21
羊の角様果実の「ストロファンタス(ストロファンツス)」

中国原産のこの植物は、写真(上)に見られるように羊の角のような変わった形の果 実を着ける。このことから中国名で「羊角拗(ヨウカクオウ)」と呼ばれている。また、あまり一般 的ではないが、和名で「ヤギツノキョウチクトウ」とも呼ばれている。

すなわち、この果実は、袋果が二又に分岐し、その後、一直線に開いて、二つの長楕円形の果 実がくっつき合ったような形を形成し、成熟するとともに木質化する。学名(種名)の”divaricatum”は英語”divaricate”の意で「分岐した」「二又に分かれた」という意を表している。果 実のこのような形成過程に因んでこの学名がつけられたものと思われる。果実の中には、先端部に白い絹質状の長い毛が束状に密生している細長い種子が、多数含まれている。種子の中には、強力な作用を示す強心配糖体ストロファンチン(Strophantin)が含まれている。

ストロファンチンは、非糖部にストロファンチディン(Strophantidin)をもつ多種の強心配糖体の混合物で、猛毒である。しかし、微量 で、心臓の収縮力を強め、心臓拍動数を減少する作用を示すことから、強心利尿剤として用いられる。強心配糖体の含有量 は種子が最も高く、力価も一番強い。しかし、種子ほどではないが、本植物のいずれの部分にも強心配糖体が含まれている。

中国では、種子のほか、根や葉も薬用に使われる。これらには、強心作用の他炎症を抑えたり、痛みや痒みを和らげたり、殺虫作用があるといわれている。このことから、関節リウマチ痛や、骨折、腱鞘炎、小児麻痺後遺症などに用いられたり、殺虫剤として使われたりする。

属名の”Strophantus”は、ギリシャ語の”strophos”(ねじれたひも)と”anthos”(花)に由来し、写 真(下)に見られるように、花冠の裂片がねじれて旋回している様子に因んで名付けられたものと思われる。

(「プランタ」研成社発行より)