BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ステルランディア・フルテッセンス(マメ科)

Sutherlandia frutescens (L.) R.Br.

ステルランディア・フルテッセンス

船に乗せて種子を運ぶ ステルランディア・フルテッセンス」

マメ科植物のステルランディア・フルテッセンス( Sutherlandia frutescens )は南アフリカの乾燥した丘に生育し、1m程度の茂みになる低木です。豆のさやが風船のようになることから、英名でバルーン・ピー( Balloon Pea )とよばれています。この植物は赤い花を多く咲かせ、 17 世紀にヨーロッパに紹介されて観賞用に栽培されました。この植物の面白いところは、英名にもあるように果実が風船のようになることです。これは種子を遠くに広げるための知恵なのです。この植物が生育する場所は乾燥地ですが、雨季になり一度雨が降ると水は地表を川のように流れます。このとき果実は船のように水に浮き、流れに乗って遠くに種子が運ばれ、湿った大地に根を下ろします。

日本では馴染みがありませんが、欧米ではキャンサー・ブッシュ( Cancer Bush )という名で知られています。 Cancer には「癌、腫瘍、病根」という意味と星座の「かに座」という意味があります。癌というと縁起でもない名前ですが、むしろこの植物は南アフリカでは古くから薬草として知られてきました。近年では抗癌作用が研究されています。これがキャンサー・ブッシュという名の由来ともいわれていますが、この植物の花が、カニの爪に似ていることからついたといわれても納得できます。

この植物は、水はけのよい砂質土に植え、日光によく当てます。当館では 2004 年の 2 月に温室内で播種し、 2005 年 4 月に開花しました。花が終わるとすぐに果実が膨らんできて、「風船」ができます。