ステファニア・ハイナネンシスは中国の海南島に分布するつる性の多年草です。根部は肥大して巨大な塊根となり、つるの基部は木質化します。当館栽培株の塊根は地際部の周長が35cm強あり、ソフトボールより少し大きいくらいです。葉は直径5cmくらいの五角ないし三角形で、葉身の内側に葉柄がつく盾状になります。Stephania属の多くはアジアとオーストラリアの熱帯から亜熱帯に分布し、日本には東海道以西にハスノハカズラ(S. japonica)1種が分布します。
ステファニア・ハイナネンシスの花序は、葉の出現に先立ち各節に現れます。花序は直径2cmくらいの傘形で、5mmくらいの花が5~15個つきます。開いた1つの花の周囲に広がるのは萼片で6または8枚あります。その内側にあるのが花弁で3または4枚、中心にある円盤状のものは合着した雄しべです。ステファニア・ハイナネンシスは雌雄異株で、この株は雄株になります。雌花は、「Flora of China」などによれば萼片1枚、花弁2枚だというのですが、図や写真をみつけることができなかったので、どんな花かはわかりません。
この仲間は、白血球減少や脱毛等に用いられるセファランチン原料のタマザキツヅラフジ(タマサキツヅラフジ、S. cephalantha)や、マラリアや声かれ、胃痛などに用いる地不容(S. epigaea)など、多くが薬用に使われます。このステファニア・ハイナネンシスも中国では海南地不容といい、塊根を関節リウマチ、浮腫、鎮痛などに用います。現地の海南島の人々はこの植物の根茎を塩漬けにして冷凍保存し利用します。また板状に削ったものを乾燥させてガムのように噛むこともあります。そして海南島の人々はこの植物のことを「金不換」とも呼んでいます。これはつまり、金に代えられないくらい重要な植物だということなのでしょう。