コブミカンは熱帯アジアに広く分布し、また栽培される木本です。種形容語の「hystrix」はギリシア語で「ヤマアラシ」のことで、枝の刺に由来します。この植物の外見的な特徴は、日本のミカン類に比べて葉の基部にある翼葉と葉身の大きさがほぼ同じであり、そのために葉が二つ連なっているように見えることです。日本のミカン類にも種類によって(例えばユズ)翼葉を持つものがありますが、これほど大きなものはありません。コブミカンの大きな翼葉は、この種がミカンの中でも原始的なものであることを示すのだとも言われています。
コブミカンの花は直径1.5cm程度と小さく、香りも少なめです。花弁は4枚から5枚です。花により雌しべの基部が大きなものと、雌しべが目立たないものがあります。
コブミカンの果実は和名のとおり表面がぼこぼこしています。果肉は独特の匂いのため食用にすることはまれで、果皮を薬味とする他、髪の香油の代わりや石鹸の代用として頭髪や体を洗うのに用いられます。また薬用としても腹痛や頭痛、小児の虫下しに用いられます。
コブミカンの場合、果実よりも葉の方がよく利用されます。これを使う有名な料理はタイのトムヤムクンです。コブミカンの他にレモングラスの茎、タイ生姜(ナンキョウソウ)、青トウガラシなどを辛く酸っぱく煮たものです。これらの植物は一まとめにしてタイの市場で売られています。日本でも、「トムヤムクン用ハーブのセット」として輸入食品店で買うことができます。
コブミカンの葉
ユズの葉
コブミカンの果実-1990年前後、タイで撮影
トムヤムクン用ハーブのセット-1990年前後、タイで撮影