<インドで染料に用いるカマラをとり、条虫駆除薬にもなる薬用植物>
2009年8月の「今月の花」のコーナーで既にこの植物を紹介しています(リンク)が、その当時は雌花しか紹介することはできませんでした。しかし、その後に育った別個体に雄花が咲いて自然受粉することができ、2011年6月に写真のように当館では初めての結実を見ました。
この果実が成熟すると果実の周りにビロードのように橙赤色の粉のようなものが着きます。果実の周囲はびっしり腺毛で覆われていて、腺毛の頭部の空間に赤い色素が貯められるためにこのように見えるわけですが、この成熟果実を集めてビンや袋に入れて激しく振り動かしたりたたきこすったりすると、表面の毛や腺毛だけとれて、ふるいにかけて集めると赤色の粉末がえられます。これがカマラ(Kamala)と呼ばれる色素で、古来インドでは絹を鮮やかな橙赤色に染めるためにこの色素が用いられてきました。
一方、カマラは古来サナダムシなどの条虫に特異的な駆除薬として用いられており、赤色色素の主成分であるロットレリン(rottlerin)やイソロットレリン(isorottlerin)が有効成分として知られています。アメリカの「医師用卓上参考書」(PDR)にもカマラとして記載されています。
ここに紹介する時点では、まだ未熟果実のように見えますので、カマラが採集できるほどになるまで観察をして行きます。
また、同属で胃腸薬に用いられるアカメガシワ(M.japonica)に含まれる薬効成分ベルゲニン(bergenin)も含むほか、材にはタンニンを多く含み、なめし皮料にも用いられました。いろいろ用途のある樹木のようです。