<中国では茎髄を利尿、消炎、催乳薬として利用する>
よく庭園樹にされるヤツデに似てはるかに大きい常緑低木に、カミヤツデ(Tetrapanax papyrifer)があります。樹高は2~4m、直径は10cmにもなり、時に7mにもなるものもあります。
中国南部や台湾に分布し、日本では琉球から九州に見られます。本州中部以西の暖地でも栽培することは可能ですが、本州では通常冬には地上部が枯れてしまいます。
幹は直立して、地下茎から叢生します。葉は30~50cmの柄をもち、径は50~70cmにもなります。掌状に5~11裂して茎の先に集まってつきます。葉の縁には鋸歯がない場合も、粗い鋸歯をもつ場合もあり、上面は無毛で裏面は厚いビロード状の毛が生えています。
成長が早く2年目から晩秋のころに花が枝の先に出て、多くの淡黄白色の花が球状の散形花序に着き、円錐状に集まって複合花序を作ります。
中国ではカミヤツデのことを「通脱木」と呼び、2~3年生の株の茎から取り出した髄を「通草」と呼んでいます。これを紙のように薄く切り広げた薄片を中国では「通草紙」と呼び、造花などの工芸品の材料とします。薄くはがないままの髄は「丸通草」といい、コルクの代用や詰め物として利用されてきました。また、「通草」は民間薬的にも利用され、利尿、消炎、催乳、通経薬として、小便不利、水腫、血尿、淋疾、乳汁不通、閉経、気息不通などの症状に用いられてきたことが知られています。