カミガヤツリは北アフリカから中部アフリカ原産の大形の多年草です。ことにナイル川の流域に生息するものが有名で、古代エジプト人がこの植物の茎の髄からパピルス紙を作りました。また、茎を束ねてボートを造ったり、繊維から布地を作ったりしたということです。
カミガヤツリはたいていの温室で見られるため、それほど珍しくない植物です。しかし、このカミガヤツリの「花」に注目することはあまりないと思いますので、今回ご紹介します。
カミガヤツリを眺めますと、太い茎の先にた
くさんの葉がついてボンボリのようになっているように見えます。しかし、形態学的にはこの茎は花茎にあたり、実際の葉は、この花茎の根元にある鞘状のものです。花茎の先の葉のようなものは小穂の下につく苞で、茎からボンボリまでは全体として花序となります。つまり、よく目にするのは開花前か後の花序なのです。
カミガヤツリの花のかたまり(小穂)は、花茎が細かく枝分かれした先につきます。一つ一つの花は鱗片の内側にあります。これを顕微鏡でくわしく観察すると、柱頭は1個が2つに裂け、雄しべは3個あることがわかりました。高さ2m以上にもなる大きな植物とは思えないほど、小さな花です。この後にできる種子も非常に小さく、長さ1mmにもなりません。試みに鉢に播いて育ててみましたが、ひと月経ってもまだ高さ1cmでした。このように初めは小さなものですが1年半ほどで高さ50cmまで生長し、小穂は見られないものの花茎と苞を付けました。
カミガヤツリの種子(灰色楕円形のもの。下の1目盛りは1mm)
カミガヤツリの実生(2010/8/24播種、9/8発芽、9/29撮影)