アリタソウは熱帯アメリカを原産とし、世界各地に分布する1年草または(冬に枯れなければ)多年草です。日本に生息するものは、天正年間に薬用として渡来したものが逸出したといわれます。学名は古くはChenopodium ambrosioides L.、図鑑などで比較的よく見かける学名はAmbrina ambrosioides (L.) Spachです。一方YListやThe Plant Listで最新の学名を調べますとDysphania ambrosioides (L.) Mosyakin et Clemantsで、当館ではこれを採用しています。和名のアリタソウは肥前(佐賀県)の有田で作られたことに由来します。
アリタソウは全体に特異な匂いがあります。高さは2m近くまで育ち、直立します。茎には稜があり下の方は木質化します。茎に毛が多いものはケアリタソウと呼ばれることもありますが学名は区別しません。葉は披針形で縁が波打ちます。多数分枝し、葉腋から花序を出します。花は4mm程度で非常に小さく、両性花または雌花です。種子は1mm以下で黒褐色で光沢があり、レンズ形です。
アリタソウの全草を土荊芥(どけいがい)といい、煎じたものを止痛や駆虫に使います。花茎や果実を水蒸気蒸留して得られる精油は、ヘノポジ油(ケノポジ油)と呼ばれ古くから駆虫、すなわち回虫(Ascaris)や十二指腸虫、小形のサナダムシの駆除に利用されてきました。主な成分はアスカリドールです。しかしながら毒性が強く、死亡例もあるとされて現在では医療用としてはほとんど使用されません。その他の用途としてセッケン、クリーム、ローションなどの香料として使用されます。
ところでヘノポジという名前は古い学名Chenopodiumに由来しますが、現在の学名はDysphaniaです。科名も今はアカザ科(Chenopodiaceae)を使っていますが、新しいAPG分類体系ではヒユ科(Amaranthaceae)に含まれます。ということは、ヘノポジ油といいながらもその語源は和名はもちろん学名からも科名からも伺うことはできません。植物への理解が深まりより正確な分類になることは結構なことですが、利用の面では、由来となる名前が消えてしまうのは寂しくもあります。