BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ヘリコディケロス・ムスキボルス(サトイモ科)

Helicodiceros muscivorus (L.f.) Engl.

ヘリコディケロス・ムスキボルス

ヘリコディケロス・ムスキボルスは地中海西部の島々(コルシカ島、サルディーニャ島、バレアレス諸島)に分布する多年草です。ヘリコディケロス属は本種1種の単型属です。属名Helicodicerosは「helico (螺旋、ヘリコプターのヘリコ)」+「di (2)」+「ceros (角、トリケラトプスのケラト)」を意味します。これは掌状の葉の両側がらせん状に折りたたまれていて開くときに2本の角の様に立ち上がって見えるさまを表しています。葉の形については邑田・松本(2021)の図6Dおよび本文に詳しく解説されています。種小名muscivorusは「ハエを食べる」という意味です。ハエが花に群がるさまを表します。

ヘリコディケロス・ムスキボルスは春に葉が展開する途中に花を咲かせます。葉腋から長さ20~30㎝の草姿に対して巨大な仏炎苞を出します。仏炎苞の内側は濃い桃色をしていますが、一面に濃紅色の毛が生えていて、獣の毛皮を思わせます。中心部の肉穂花序の附属体にも剛毛が生えています。開花すると肉が腐ったような、同じサトイモ科のコンニャクやリュウキュウハンゲに似た不快な匂いを発します。さらには、肉穂花序から最大30℃の熱を発します(Seymour et. al., 2003.)。この悪臭でハエを集めます。今回を含めて2回開花し、2回とも月曜日の朝には開いていたのでいつからいつまで開くのかわかりませんでしたが上記Seymour et. al. (2003)によると夜に開き始めて初日は雌花、次の日に雄花が開き、3日目に仏炎苞は閉じてしまうようです。

ヘリコディケロス・ムスキボルスは夏前には地上部を枯らして球根(塊茎)で休眠してしまいます。秋に植え替えるために球根を掘り起こすと球根は棒状もしくは小判型をしています。くちばしの様にとがった新芽や茶色の薄皮に覆われたところは、昆虫の蛹を想像させてとても奇怪です。胴体に付いている丸いものは子芋です。球根の上下は芽のある方が下で、球根から下向きに出た芽が180度近く首を曲げて上に葉を伸ばします。

とにかくインパクトのある植物ですが、開花期間があまりに短く展示してもどなたもご覧になれないところが悩みです。

参考文献
邑田・松本, 2021. https://doi.org/10.18942/chiribunrui.0691-10
Seymour et. al., 2003. https://doi.org/10.1111/j.1365-2435.2003.00802.x

2022年3月14日
 2022年3月15日
2022年3月16日
球根