BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

コンニャク(サトイモ科)

Amorphophallus konjac K.Koch

コンニャク

植物の話あれこれ 23
花が男根に似る「コンニャク」

蒟蒻(こんにゃく)は、すき焼きや、おでん、煮物になくてはならない食品である。これは、コンニャクの塊茎を加工してつくられたものである。塊茎に含まれている多糖質の貯蔵物質マンナンを、石灰で凝固させてつくる。

コンニャクは、インドシナ半島原産の多年草の塊茎植物で、地下に大きいものでは直径30cmをこえる塊茎を形成する。毎年春その塊茎が発芽発根し、そこから1本の高さ60cmほどの茎のように見える長い葉柄を直立させる。その葉柄は先端で放射状に3裂し、更に細かく分裂し、多数の小葉をつけ傘のように拡がる複葉を形成する。

葉は秋には枯れるが、塊茎は年々新たに形成され、しだいに大きくなる。塊茎が小さいうちは葉だけしか発生しない。しかし、3~4年経過して塊茎が大きくなると、初夏に、写真に見られるような高さ1mほどの仏炎苞に包まれた花序だけが地上に出てくる。

大部分のサトイモ科植物はこのような肉穂花序が大形の苞に包まれた仏炎苞を形成する。「仏炎苞」という名は、このような花序が仏像に、また苞が火炎光背のように見えるところから名付けられたといわれている。

しかし、植物分類学者はコンニャクのこのような花序の形が、男根に似ているとみなし、この植物の学名(属名)を、”Amorphophallus”と命名した。これは、amorpho(奇形の、不格好な、無定形の)と、phallos(英語penis;陰茎、男根)とからなる言葉である。

暗紫色の仏炎苞に包まれた肉穂花序の基部に雌花が、その上部には雄花が密集して着く。また花序の先端部には太くて長い棒状円錐形の付属体が着いている。仏炎苞は、周囲にひどい悪臭を放つ。

蒟蒻は、たとえ話や、落語にまで登場する、とかく話題の多い食品で古くから親しまれてきた。しかし、蒟蒻には体内の砂を払う作用があると言われ「胃腸のほうき」あるいは「砂払い」などと称されている。また、利尿作用や、末梢血管を拡張して血圧を下げる作用などが認められており、蒟蒻の乾燥粉末を利尿薬や炎症を和らげたり、下痢を止めたりするための薬としても使われる。

(「プランタ」研成社発行より)