<細長い鞘のような果実は生薬「キササゲ」で利尿薬として利用する>
キササゲ(Catalpa ovata)は、樹高が10mを超えることもあるノウゼンカズラ科の落葉性の高木です。原産は中国・中南部で、日本にはもともとは自生していませんでしたが、古い時代に日本に渡来してきて栽培もされ、現在では半野生化している状態と考えられています。
灰褐色の樹皮は縦に裂け目がはいります。葉は対生して、長い柄を持ち、長さ10~20cmほどの広卵形で浅く3裂して、先端は尖っています。
材は軽いので下駄や印刷用の版木として使われてきました。中国ではキササゲのことを梓樹(シジュ)といいますが、これが基になり「出版すること」を「上梓する」というようになったとされています。
夏に枝先に円錐状の花序を出して、写真のような鐘形で淡黄色、内側に紫色の斑点のある花を多数つけます。花が終わり、秋になると長さ30cmほどのマメ科のササゲのような細長い果実をたくさんつけることから、キササゲ(木ささげ)と言われるようになったようです。莢の中には多数の種子が入っていますが、種子は平たく両端に長い白毛があって、果実が熟して開裂するとふわふわと風に乗って飛び散って繁殖します。
褐色に熟した果実を乾燥したものが生薬のキササゲで、カタルポシド、カタルポール、カタルピノシドなどのイリドイド系モノテルペノイド、カタルポノン、カタルポノールなどのナフトキノン類を含むほか、フタリド類やフラボノイドを含むことが知られている生薬です。利尿薬として、腎炎、ネフローゼなどのタンパク尿に、また脚気、浮腫に利用することができます。
「キササゲ」は現行の日本薬局方にも収載されており繁用生薬の一つとして知られます。
一方中医方では、樹皮を梓白皮といい、解熱、駆虫、黄疸などに利用されることが知られています。