BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

アリサエマ・リヘンギアヌム(サトイモ科)

Arisaema lihengianum J.Murata et S.K.Wu

アリサエマ・リヘンギアヌム

アリサエマ・リヘンギアヌムは中国の広西チワン族自治区で1997年に発見されたテンナンショウ(天南星)です。ベトナムのトゥエンクアン省(Tuyen Quang Province)にも分布が知られています。中国名は李恒南星 li heng nan xingです。南星は、天南星のことです。学名の種形容語にもなっている李恒li hengは、中国科学院昆明植物研究所でサトイモ科の分類を研究している李恒博士に献名されたものです。

アリサエマ・リヘンギアヌムはサイクルの長い生態をしており、山科植物資料館の場合では1月ごろに3小葉の葉を出し翌年3月頃に枯れます。2年目の1月に運が良ければ花を出し、遅れて葉も出てきます。花はなくて葉だけが出てくることもあります。また葉が枯れた後に次の葉を出すのをやめてしまい、半年から1年間、休眠することもあります。実に奇妙な生態をしています。塊茎の形も奇妙で、日本のウラシマソウやマムシグサなどのテンナンショウが球形なのに対して、トチバニンジン(竹節人参)のような横に走る円筒形です。

アリサエマ・リヘンギアヌムの花(花序)は、これも独特です。花序の附属体はウラシマソウ(リンク)の様に長く伸びて垂れさがり、そこからさらに細かな枝が出ています。この枝は記載論文(Murata and Wu, 2003)には糸状の退化花と記されています。仏炎苞は基部が白色で先端は赤紫色です。仏炎苞の色、附属体の形ともに最も奇妙かつ美しいテンナンショウの一つではないかと思います。

Flora of Chinaおよび記載論文によると石灰岩地帯に生息しているというので、鉢内に石灰岩の小石を置いています。小石がない頃よりは元気に育っているような気がします。

参考文献
Murata and Wu, 2003. http://www.jjbotany.com/pdf/JJB_078_81_85.pdf
Hoang et al., 2015. https://www.researchgate.net/publication/283579134_Arisaema_lihengianum_Araceae_A_newly_recorded_from_Vietnam
Flora of China. http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=250095416