ヤカツはインド東部から中国南部に分布する蔓植物です。北米には同じ属のカロライナジャスミン (Gelsemium sempervirens、植物の話あれこれ49 .有毒植物 「カロライナジャスミン」)が分布しており、こちらは広く栽培されています。種形容語の elegans(優美な) とは裏腹に、猛毒を含むたいへん危険な植物です。
中国では「冶葛」「胡蔓藤(こまんとう)」「胡満蔃(こまんきょう)」「鈎吻(こうふん)」などと呼ばれて毒草としてよく知られており、唐の法律書「唐律疏議」 (653年)にも毒薬として載せられています。また、奈良時代には日本に輸入され756年に正倉院薬物として保管されています。「図説 正倉院薬物」 (2000) によれば、この正倉院の「冶葛」は文献に記録された冶葛の唯一の現物だそうです。また当時、「冶葛」と呼ばれた植物が間違いなく Gelsemium elegans であったことを示す重要な証拠でもあります。
ヤカツの花はカロライナジャスミンと同じように黄色い釣鐘状の花です。ただし、カロライナジャスミンほど多くの花を付けないので観賞には向きません。今年は屋外で栽培していますが、夏に茂った葉はカロライナジャスミンよりも大型で柔らかく、食べてみたらおいしいのではないかという誘惑に駆られました。もちろん、決して食べてはいけません。