ツノゴマの仲間の果実は、長く伸びて湾曲した 2 本の角をもつユニークな形をしています。形が面白いので、装飾品にしたり、米国では園芸植物として人気があり、日本でも鑑賞用に栽植されます。今回紹介するキバナツノゴマは、南アメリカ原産の 1 年草で、アメリカのカルフォルニア、オーストラリアや南アフリカに帰化しています。以前に紹介したツノゴマ(リンク)とよく似た植物で、大きく違う点は花が黄色いことと、果実の大きさが異なることです。ツノゴマの果実は角の部分も含めて約 10 cm であるのに対し、キバナツノゴマは 15 cm もあります。属名の Ibicella はヤギを意味し、ヤギのように鋭い角のついた果実をつける茂みは、そこに住む人や家畜にとって非常に厄介なもののようです。
キバナツノゴマの葉や茎にはねばねばした腺毛があり、注意深くみると写真のように 1 mm 以下の小さな虫が捕らえられています。この植物は昔から食虫植物かどうかが議論されてきたのですが、比較的最近の 1989 年に食虫植物として認められました。食虫植物とは、昆虫を呼び寄せて捕らえ、溶かして消化し、養分を吸収するといった特徴をもつ植物のことを指します。キバナツノゴマが昆虫を消化する酵素を分泌するかについては明らかではありません。しかしながら、食虫植物のサラセニア( Sarracenia )の中には自ら消化酵素を出さず、微生物によって分解されるのを待って、養分を吸収するものがあり、キバナツノゴマも同様と思われます。
ツノゴマは暖かくなってから播種しますが、このとき種子の硬い種皮を取ってから播くのがコツです。そのまま播くと種皮が腐ってから発芽するので、何年か先に発芽することになります。食虫植物は肥料を与えると生育が悪くなる場合がありますが、この植物は他の作物と同様に肥料を与えて育てます。キバナツノゴマは土壌中に養分があれば、生育にとって十分なのですが、その場合でも葉で多数の昆虫を捕らえます。そして、秋にはユニークな果実をたくさんつけます。