Hemerocallis属(キスゲ属)は東アジア原産ですが、ヨーロッパやアメリカで品種改良がおこなわれて多数の園芸品種が生みだされたことは同属のアキノワスレグサの項でも紹介しました。その中で中国原産で日本各地に野生化した種はアキノワスレグサと今回取り上げたヤブカンゾウが代表とされています。
ヤブカンゾウは古代に日本に渡来して北海道から九州まで普通にみることができる多年草です。7月から8月に写真のように、葉間から1~1.5mほどの花茎が伸びて橙色のユリに似た八重の花を数個咲かすのが特徴です。ヤブカンゾウもアキノワスレズサも三倍体で種子は実らず、根茎から横につるを出して栄養繁殖で増えます。
春の若葉はゆでてお浸しや和え物などにして食べることができます。また、解熱剤や利尿剤として薬用としても利用されて、蕾は解熱に、根はむくみをとったり利尿剤として使うことができます。花にはコハク酸、ヒドロキシグルタミン酸、βシトステロールなどが、根にはアスパラギン、リジン、アルギニンなどの化学成分が含まれることが知られています。
漢方生薬で名高いカンゾウは甘草という漢字をあてマメ科植物をさしますが、ヤブカンゾウのカンゾウは萱草と字をあてます。中国でもこの字をあてますが、萱の字が「忘れる」という意味をもつことから、ワスレグサとも呼ばれます。