ショウガ科に属するアルピニア属は、アジアの温暖な地域から太平洋諸島の熱帯地域にかけて約250種が知られています。今回とりあげたハナミョウガは、日本では関東地方から四国、九州、奄美諸島、さらに中国東南部から南部にかけて分布する暖地の樹陰に生える多年性の植物です。
草丈40~60cmほどになり、葉は広皮針形か狭長の楕円形で下面にはビロードのような毛が密生しています。5月~6月頃に15cmほどの穂状の花序が立ち上がって、花序の各節に2~3個の写真のように赤いすじの入った白花をつけます。果実は楕円形で先端に萼を残して写真のように赤く熟します。種子はフラボノイドのアザルピニンやアルピニンを含むほか、シネオールやβ-ピネンなどの精油成分も含み独特の香りを持っているので、芳香性健胃薬として利用されてきました。これを伊豆縮砂(イズシュクシャ)といいます。
安中散などの漢方処方に配合される芳香性健胃薬の生薬である縮砂(シュクシャ)は、別のショウガ科 Amomum xanthioides の種子ですが、伊豆縮砂は縮砂の代用として利用されてきました。
中国では本植物を山姜(サンキョウ)といい根茎あるいは全草を腹痛、リウマチによる筋肉痛、打撲、月経不順になどに用いることが知られています。
アルピニア属植物は果実や種子、あるいは根茎などに独特の芳香をもつものが多く、芳香性健胃薬の材料生薬として利用されるものがいくつもあります。良姜(リョウキョウ:Alpinia officinarum の根茎)、益智(ヤクチ:A. oxyphylla の果実)、草豆蔲(ソウズク:A. katsumadai の種子)などがその例です。