トゲハアザミはヨーロッパ南部から地中海原産の多年草です。ロゼット型で、写真は鉢植えのため小さいですが、草丈 1 m 近くまでなります。夏になると花柄を伸ばし、紫色を帯びた白色花が穂状につきます(写真2)。日本へは明治の末ごろに渡来したといわれ、花壇で栽植されたり、切花として利用されることもあります。
この植物の葉は深く羽状に切れこんで、先にはとげがあります(写真3)。属名の Acanthus (アカンサス)はとげを意味します。この葉の形が面白く、美術図案のもとに用いられました。古代ローマ・ギリシャ時代、柱の頭部分や陶器の模様に盛んに使われました。コリント式柱頭がその典型的な例です。このモチーフは植物の名をとって、アカンサスとよばれたりもします。
このモチーフは、紀元前 5 世紀ごろギリシャの彫刻家が、墓に供えられた籠をトゲアザミの葉が囲んでいるのを見て、思いついたといわれています。その後、この文様は広く伝わり、ギリシャだけでなく、インドのガンダーラ美術でも見られます。