クサミズキは日本の西表島と石垣島、台湾からルソン島、スマトラ島にかけインドシナ半島、セイロン島、インドまでに分布する小高木です。普通高さ5mくらい、ときに15m程度になります。葉は長さ10~20cm、幅5~10cmで互生し長楕円形、はじめ毛がありますがやがてなくなります。茎には稜が見られます。和名の「クサミズキ」は、ミズキ科のミズキ(Cornus controversa)に似ていて葉や果実が悪臭を放つことから「臭水木」となったとされます。日本で以前用いられたクサミズキの学名N. foetidaの形容語名「foetida」も「悪臭がある」という意味です。もっとも、葉をもんでも悪臭はなく、果実で導入した際もそれほどの悪臭ではなかったと記憶していますので、この和名は不思議に思われます。クロタキカズラ科はおよそ50属400種もある比較的大きなグループですが、日本には3種しか分布せずどれも珍しいのでほとんど馴染みがありません。この3種とは日本固有で近畿以西、四国、九州に分布するクロタキカズラ(Hosiea japonica)とこのクサミズキ、それからクサミズキに良く似ていて奄美大島に分布し2004年に記載されたワダツミノキ(N. amamianus)です。
クサミズキの花序は枝の先端につきます。花は直径1cm、花冠は5裂し白色で内側には毛があります。雄しべは5個、雌しべは1個です。花には淡い独特の匂いがあります。悪臭とまでは言えないように思いますが、木全体にたくさんの花がついたら臭いのかもしれません。分類は全く異なりますが大きさや毛のある花冠はアカキナノキに少し似ています。
野生のクサミズキは国内での生息が減っているため絶滅危惧IB類(EN)に指定されていますが、アルカロイドのカンプトテシンを含むため、石垣島で栽培されています。カンプトテシンは初めカンレンボク(Camptotheca acuminata)から発見され、制癌作用を持つことが明らかにされました。しかしカンプトテシンは副作用が非常に強いため、これを改変して副作用を弱めたイリノテカンが制癌剤として利用されています。栽培されるクサミズキもイリノテカンの原料となります。
クロタキカズラ