BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ユソウボク(ハマビシ科)

Guaiacum officinale L.

ユソウボク

<水に浮かずに沈む木 ユソウボク>

ユソウボクは中央、南アメリカに分布する高さ15mになる小高木です。この木の心材は、黒色に近い濃緑褐色で、極めて硬く、緻密で、最も重い材のひとつです。樹脂を含むため、潤滑油を必要とするような、機械的な部品に最適とされています。昔から船のスクリューの軸受けなどに利用されてきました。

たいていの材木は水に浮きます。これは、材木の中に空気を含んでいるためですが、ユソウボクの材木は、緻密で空気をあまり含んでいません。このために、乾燥させた材木の比重は約1.30で、水よりも重くなり、水に沈むのです。

ユソウボクの材木はリグナム・バイタ(Lignum-vitae)という名で、流通しています。これは英名で“Wood of life”の意味で、この植物の材と樹脂が、特異な治癒力を持っていると信じられたためでした。実際に、1508年にヨーロッパに紹介されると、その後2世紀にわたって、高価に取引きされました。和名のユソウボクは「癒瘡木」と書き、かつて治療に使われたことにちなみます。

ユソウボクの樹脂は、グアイオール(guaiol)を多く含み、グアイアズレン(guaiazulene)という物質の原料になります。グアイアズレンは抗炎症作用があることが知られ、現在でも化粧品や医薬品などに利用されています。