マンナノキは、南ヨーロッパから小アジアに分布する高さ15~20mの高木です。「マンナ」とは変わった名前ですが、この木から取られる甘い樹液のことで、旧約聖書に登場する神の食べ物「マナ(Manna)」に因むものです。「マンナ」と呼ばれる甘い液はマンナノキからだけではなく、ギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)、レバノンスギ(Cedrus libani)、ヨーロッパカラマツ(Larix decidua)など、多くの植物からも取られます。この甘い成分は糖アルコールのマンニトールで、この名前も「マンナ」に因みます。マンニトールは日本薬局方収載の医薬(浸透圧調整剤、利尿剤、下剤)、化粧品原料、食品添加物として幅広く利用されています。
白く細やかな花は遠目には同じモクセイ科のヒトツバタゴ(Chionanthus retusus、別名「ナンジャモンジャノキ」)に似ていますが、マンナノキの方が少し早くに咲くことと、葉の形が全く違うので簡単に区別できます。
満開になると木全体が白く輝くようになり、適度に大きく育つことからヨーロッパでは庭園樹としてよく栽培されますが、日本ではほとんど見られません。当館の経験では栽培の難しい植物ではないので、もっと広まっても良いのではないかと思います。