日本での藍染めは、アイ( Persicaria tinctoria ;タデ科)の葉からインジゴ染料を作って行いますが、ヨーロッパではホソバタイセイを用いました。この植物は南ヨーロッパ原産で、中世には盛んに栽培されました。その利用方法はアイと似ており、葉を乾燥させた後、醗酵させて藍玉を作ります。しかし、醗酵過程にひどい悪臭がするので、イギリスのエリザベス 1 世は、すべての自分の宮殿から 8 km 以内では、染料の製造を禁止したという話が残っています。
英名のウォード( Woad )という名は、青い刺青という意味に由来するといわれています。古代ブリトン人はこの植物から青い泥膏を作り、体に塗っていました。この植物の葉には収斂性があるため、止血薬としても用いられます。そのため、敵を恐れさせるだけでなく、戦いによる傷を癒す目的もあったといわれています。
ヨーロッパで 2000 年にもわたり利用されてきたホソバタイセイですが、 17 世紀になって、インド藍とよばれたマメ科のタイワンコマツナギ( Indigofera tinctoria )からとる、インジゴ染料が輸入されるようになると、次第に栽培されなくなりました。