BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ハリグワ(クワ科)

Maclura tricuspidata Carrière

ハリグワ

<養蚕飼料として日本に導入されたクワ科落葉樹木>

ハリグワは、中国、朝鮮半島の原産のクワ科の落葉小高木で、樹高は8mほどにもなりますが、まれに人家でも植えられることがあります。
葉は互生して、ひし形あるいは倒卵形で、表面には光沢があります。葉の裏面はやや色が薄くて細かい毛が生えています。小枝が変化してとげになることがあり、これがハリグワの名の由来となったとされています。
葉はクワの葉よりやや厚めですがカイコが食べることができるので、日本には明治年間に養蚕用の飼料として導入されました。またヨーロッパには1870年代、アメリカには1930年くらいに導入されたことが知られているようです。
葉腋から短い花柄を出して、6月頃に写真のような直径1cmほどの球花をつけます。雌雄異株ですが日本の個体はほとんどが雄といわれており、当館栽植のものも雄の個体です。
結実すると11月頃に直径2.5cmほどの赤い多肉質の球状果になり、食用や果実酒の原料とすることができるそうですので、ぜひ雌株を手に入れて果実をならせてみたいと思っています。
他にもさまざまの用途が知られる植物のひとつで、樹皮の繊維は紙の原料として、また縄などを作るのに利用され、材は家具や細工物の材料に、また黄色の染料をとるのに利用されて来ました。
更に中葯大辞典をみると、中国では材を柘木(シャボク)と称して「婦人の崩中血結、瘧疾を治す」とし、コルク層を取り去った樹皮と根皮を柘木白皮(シャボクハク)と称して「腰痛、遺精、喀血、嘔血、打撲傷を治す」とされ、内用にも外用にも用いられ、薬用として利用されて来たことがわかります。