ニュウメンランは琉球地方から台湾、フィリピンに分布する樹上性の着生ランです。イリオモテランとも呼ばれます。「ニュウメンラン」は漢字で書くと「入面蘭」で、「いりおもてらん」の音読みになります。では、「いりおもて」を一般的な「西表」と書かずに「入面」と書くのはどういう訳かというのは、調べた範囲ではよく分かりませんでした(逆に「西表」と書いてなぜ「いりおもて」と読むのかというのは、インターネットで調べればすぐに分かります。興味のある方は検索してみて下さい)。ともかく、この植物はYListに従えばニュウメンランなのです。また、学名についてもややこしく、古くはフィリピンに分布する種と同じTrichoglottis ionosma (Lindl.) J.J.Sm. が充てられていましたが、ニュウメンランはこれとは別種であるとして Trichoglottis luchuensis (Rolfe) Garay et H.R.Sweet に変えられました。現在でもこのT. lutchuensisを使用している文献、インターネットサイトが多いのですが、当資料館ではYListやThe Plant List (Version 1.1)を元にsynonym (同種異名)の整理を進めて、タイトルにある Staurochilus luchuensis (Rolfe) Fukuy. を採用しています。因みにフィリピンのT. ionosma も、 The Plant List では Staurochilus ionosmus (Lindl.) Schltr. が正式となります。
ニュウメンランは長さ約20cmの肉厚楕円形の葉を2列に互生します。茎は直立または垂れ下がります。先端から3~6枚目くらいの葉の付け根から花序を出します。花は直径約3cmで淡黄色、赤褐色の斑があります。唇弁は白色~淡黄色、やはり赤褐色の斑があります。唇弁の後ろには5mmくらいの短い距があります。
ニュウメンランは日本の着生ランの中では大形で見応えがあるので乱獲されて減少し、環境省レッドリストの絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。当館の個体は導入時期のはっきりしないもので90年代に台帳に登録した際には「1962年9月8日沖縄導入の株ではないだろうか」とのメモが付けられています。本当ならこの株は50年以上育てられていることになるので、入手時の情報が正しく伝わっていないのは実に惜しいことでした。入手時の記録はきちんと残して、栽培するのと同じくらいに大事にしていかなければと決意を改めています。