この植物の属名は Passio (キリストの受難、苦悩)と Flora (花)をもとに南アメリカの宣教師たちによって命名されました。異説はありますが、副冠が荊の冠、 5 つの葯は 5 つの傷、 3 本の花柱は 3 つの爪をあらわすといわれています。日本では機械的な花の形からトケイソウ(時計草)と名づけられました。
約 400 種あるトケイソウの仲間の中でもチャボトケイソウはもっとも有名な鎮静作用のあるハーブで、北アメリカ南部から南アメリカにかけて分布し、今では熱帯・亜熱帯地域で栽培もされています。古くは精神安定作用のある薬草として北米先住民のアルゴンキン族によって用いられました。 19 世紀には不眠の治療薬として米国で用いられ、現在では非習慣性の精神安定薬として、この植物のエキスが鎮静剤などの構成成分となっています。また、パッションフラワー( Passion flower )という名でお茶として利用されることもあります。
トケイソウの仲間は寒さに弱いものが多いのですが、チャボトケイソウは比較的寒さに強いとされています。当館では春、気温が 20 ℃を十分超えるころ種まきをしました。トケイソウの仲間は日当たりがよく、水はけのよい土壌を好みます。夏には芳香のある淡紫色の直径 6cm 程度の花を咲かせました。温室内や温暖な気候下では常緑ですが、当館のある京都山科では寒くなると葉を落とし、じっと春を待ちます。来年の夏にはより多くの花を咲かせてくれるでしょう。