BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

タシロイモ(ヤマノイモ科)

Tacca leontopetaloides (L.) Kuntze

タシロイモ

タシロイモは熱帯各地に見られる多年草です。和名は、南西諸島や南方の動植物を調査した田代安定(1857-1928)に因みます。この属はかつてタシロイモ科(Taccaceae)とされていましたがAPG分類体系(APG II以降)ではヤマノイモ科に含まれています。

この仲間で比較的有名なクロバナタシロイモ(Tacca chantrieri)は肉質の太い茎から根と葉を出しますが、タシロイモはジャガイモのような芋(塊茎)を作ります。葉は深い切れ込みのある掌状でコンニャクの葉に似ています。1枚の葉に続いて、高さ1m以上になることもある花茎を伸ばします。2~12枚の総苞は長さ3、4cmと小さく、クロバナタシロイモのようには目立ちません。花序には不稔の花に由来する糸状の苞葉があります。蕾は直径2cm程度です。花は、夜間に観察しても完全に開いたものを見たことはなく、いつ開くのかわかりません。しかし気がつくと結実しています。果実は直径4cm程度で、黄から褐色に熟します。果実には多数の種子が入っていて、直径3mm程度で表面には多数のしわがあります。12月ごろには地下茎を伸ばして先端に次年の塊茎を作り、今年の植物体は全て枯れます。

タシロイモの塊茎は、上記のようにジャガイモに似ていて、いかにも美味しそうです。ところが苦味と毒性のあるタッカリン(Taccalin)を含んでおり、そのまま食べることはできません。太平洋の島々ではよくさらしてデンプンだけを取り、食用としました。