当館ではオーストラリアに分布している「引き金植物」のスティリディウムを2種類育成しています。S. graminifoliumとS. adnatumです。引き金植物 (trigger plant) とは雌しべと雄しべが合着して、ずい柱となり、訪花昆虫の刺激を受けてハンマー形のずい柱が一瞬のうちに回転して昆虫の躰に花粉を噴射して授粉および、その昆虫が他花から運んできた花粉を受粉する植物をさします。この2種を比べると形態などにかなりな違いがあります。
S. graminifolium | S. adnatum | |
葉 | 根出葉のみ | 茎葉がある |
草丈(7号鉢) | 57 cm(花茎含む) | 27 cm |
分布 | 東オーストラリア | 西オーストラリア |
開花期(京都) | 5月 | 4月 |
花冠の長径 | 1 cm強 | 5 mm強 |
引き金 | 重い | 軽い |
問題は刺激に対するハンマー形のずい柱の反応です。S. adnatumの場合、軽い刺激でもほぼ100% ハンマーは振り落とされます。ところがS. graminifoliumは軽い刺激ではハンマーが落ちません。この違いはどこからくるのでしょうか。私のかってな推察で申し訳ありませんが、訪花昆虫の違いではないでしょうか。大形のS. graminifoliumには大形の、小形のS. adnatumには小形の訪花昆虫によって授粉および受粉が行われていると考えられます。大形の訪花昆虫の刺激は小形のものより、より強いでしょうから。そのことが引き金の軽い、重いの理由ではないでしょうか。
スティリディウム・グラミニフォリウムのハンマー形ずい柱 (矢印)
スティリディウム・アドナツム (Stylidium adnatum)