ゴシュユはインド北部、ブータン、ミャンマー、ネパールから中国にかけて分布する雌雄異株のミカン科落葉低木です。現在の第十八改正日本薬局方にも収載されているEuodia ruticarpa(第十五改正日本薬局方まではEvodia rutaecarpa)の方がなじみ深い名前ですが、1981年にHartleyによってTetradiumに変更されました。Euodia属の種子はざらざらして果実が開いた後に脱落し、Tetradium属の種子は光沢があり滑らかで、果実が開いても脱落しない、という点で異なります。Tetradium属は南アジア、東南アジアから中国、日本まで9種が知られています。日本にはハマセンダンTetradium glabrifolium (Champ. ex Benth.) T.G.Hartley var. glaucum (Miq.) T.Yamaz.が分布します。
ゴシュユは長さ30cmほどの奇数羽状複葉を対生します。小葉は5~11枚です。株元から多数の茎を出して灌木となり樹高5mほどになります。
ゴシュユの花は枝の先端に直径15cmほどの花序をつけます。1つの花の大きさは1cmほどです。花弁は5枚です。果実は10月ごろに赤くなりますが、日本では雌株のみが栽培されていて種子はできません。11月ごろにこの未熟果を収穫します。中国産の果実には種子が入っていますが、未熟果でも生薬としての品質には問題ないようです。日本では福井県でわずかに生産されているそうです。乾燥させる前の生の果実は、ミカンの皮のような油っぽい食感に強い苦みとサンショウを思い出させる辛味があります。
生薬としては果実をゴシュユ(呉茱萸)といい、成分としてエボジアミン・ルテカルピンなどのインドールアルカロイド、リモニンなどの苦味質を含みます。鎮痛、鎮吐、健胃、利尿などの効能があり、漢方では水毒による頭痛や嘔吐などに用いられ、温経湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯などに配合されます。他にも生薬を配合する胃腸薬や女性保健薬、滋養強壮薬に含まれることがあります。
参考文献
T. G. Hartley, (1981) A Revision of the Genus Tetradium (Rutaceae). Gard. Bull. Singapore. 34: 116. https://www.nparks.gov.sg/sbg/research/publications/gardens’-bulletin-singapore/-/media/sbg/gardens-bulletin/4-4-34-1-02-y1981-v34p1-gbs-pg-91.pdf
ゴシュユ | 公益社団法人東京生薬協会 (tokyo-shoyaku.com) https://www.tokyo-shoyaku.com/ohana.php?hana=415