BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

オキナワスズムシソウ(キツネノマゴ科)

Strobilanthes tashiroi Hayata

オキナワスズムシソウ

オキナワスズムシソウは奄美(喜界島、沖永良部島)と沖縄(本島、久米島)に分布する多年草です。日本の固有植物の一つです。和名にスズムシと付く植物はいくつかあって、YListで調べると16種類あります(2021年1月22日閲覧)。大きく分けると2つの科があって、1つは「スズムシソウ」などのクモキリソウ属Liparisとオオスズムシラン属Cryptostylisが含まれるラン科、もう1つは「スズムシバナ」などのイセハナビ属Strobilanthesが含まれるキツネノマゴ科です。オキナワスズムシソウは「スズムシソウ」と書いてあってラン科とまぎらわしいのですが、花を見るとキツネノマゴ科の特徴がよく出ています。

イセハナビ属はアジアからマダガスカルの熱帯、亜熱帯に400種ほど分布し、よく似た姿のものが多いのですが、オキナワスズムシソウも琉球地方のコダチスズムシソウS. glandulifera Hatus. (別名セイタカスズムシソウですが、ラン科に同一の和名があるため改訂新版日本の野生植物ではコダチスズムシソウを推奨)、台湾のアリサンアイS. flexicaulis Hayataと似ています。オキナワスズムシソウは他2種より小さく、基部が地上を這い、節から根を下ろすところが異なります。またオキナワスズムシソウは毎年開花する多年草ですが、コダチスズムシソウは数年に1度開花、結実すると枯死してしまう1回繁殖型多年草です。アリサンアイは多年草で日本には分布しません。

オキナワスズムシソウの花は1~4月に頂生または腋生する短い穂状花序をつけます。花の直径は3㎝ほどで不鮮明な網目模様のある繊細な花弁をしています。色は通常、淡紫色ですが、白色の花が咲くこともあります。

オキナワスズムシソウを栽培していると、旺盛に横へ広がって鉢を飛び出し、地面についた茎から根を伸ばして逃げ出そうとします。忌地するようで放っておくと鉢の中はどんどん弱り、植え替えを行うと再び元気になります。
白花のオキナワスズムシソウ