オオムラサキシキブは日本の南部(本州の伊豆半島と紀伊半島、伊豆七島、四国南部、九州の南部と西部、琉球)、韓国南部、および台湾島嶼部の海岸近くに分布する落葉低木です。学名でわかるようにムラサキシキブ(Callicarpa japonica Thunb.)の変種とされます。オオムラサキシキブはムラサキシキブと比べると葉が大きくて厚く、花序も大きくなります。筆者が当資料館に配属されて初めてこの木を見たときは、ムラサキシキブの変種であるとはにわかに信じられなかったのですが、自生地では中間型があるそうなので間違いないようです。
ムラサキシキブ属Callicarpaはかつてクマツヅラ科に分類されていました。しかしクマツヅラ科のうちムラサキシキブを含む集散花序をもつグループが花粉や胚の形態や化学成分などの点でシソ科と近い関係であることが判明したため、1992年にこれらの群をシソ科に移す提案がなされました。その後の分子系統学的解析でもこの提案は支持されています。さらに現在はいくつかの亜科に分類されています。『改訂新版 日本の野生植物 第5巻 (2017年)』ではムラサキシキブ属がどの亜科に所属するかは不明とのことでしたが、より新しいAngiosprm Phylogeny Website (Page last updated: 09/17/2022 01:30:58)では、独立したムラサキシキブ亜科Callicarpoideaeとなっています。
オオムラサキシキブの花序は葉腋に生じ、枝の左右に1つずつ対生します。ムラサキシキブと同じように、葉柄よりもわずかに上から出てきます。先に書いたように花序は大きく、左右合わせて直径10~15㎝程度になります。
当館のオオムラサキシキブは2005年に園路の変更に合わせて移植し、サイズダウンしたのでしばらく結実しませんでしたが、2012年ころより徐々に回復して再び結実するようになりました。年によっては多数の果実を付けますが、今年は少ないようです。果実の見頃はムラサキシキブと同じように12月ごろです。