BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ナンバンアカアズキ(マメ科)

Adenanthera pavonina L.

ナンバンアカアズキ


植物の話あれこれ 1
相思相愛の木「ナンバンアカアズキ」

中国では「海紅豆」あるいは「相思樹」と呼ばれ、この木の産する光沢のある鮮紅色の種子は昔から相思相愛のシンボルとされてきた。

「紅豆南国に生じ、春来たりなば幾枝を発す、君に願う多く採りて襭せよと、此物最も相思なり」 王維

若き日の王維が、麗しき乙女と川辺を散策していると、ふとこの木にでくわし、木の下には、きらきらと輝く紅色の豆がたくさん落ちていた。さっそく、彼女に「さあこの美しい豆をたくさんひらって袂(たもと)にしまっておいて下さい。私も、沢山採ってしまっておきましょう。これは、昔から相思相愛のしるしと言い伝えられてきたのですから」とすすめたのではないかとうかがえる。王維がこのような形で愛を告白した情景が、この詩から偲ばれる。

バレンタインデーやホワイトデーに、チョコレートもよいと思うが、海紅豆で作ったネックレスや、ネクタイピンを、プレゼントしてみてはいかがであろうか。彼女や彼のハートを、きっと射ることができると信じる。

植物種名pavoninaは、Peacock-like「クジャクに似た」、showy「派手な」、coloured「色あざやかな」などの意味がある。「クジャクに似た」は中国名で「孔雀豆」ともいわれているが本植物の総状花序を表わしているのではないかと思われる。「派手な」「色あざやかな」は種子の光沢のある鮮やかな紅色を表わしていると思われる。

英名ではRed sandalwood tree(赤いビャクダンの木)Coral pea(サンゴ豆)Peacock flower fence(クジャク花の垣)と呼ばれている。

本種は、熱帯アジア原産の落葉高木で海岸べりなどでよく見られる。中国名で「海紅豆」と呼ばれているのは、このことに由来するものと思われる。

種子の大きさや重さは極めて均質で、古くから金や宝石を量る分銅の代わりに用いられたということである。中国や、インドなどでは、この種子や葉、根が薬用に使われる。炎症や、リュウマチ、頭痛などに効果 があるとのことである。

(「プランタ」研成社発行より)