BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ディオスコレア・コムニス(ヤマノイモ科)

Dioscorea communis (L.) Caddick et Wilkin

ディオスコレア・コムニス

ディオスコレア・コムニスはヨーロッパの南部から西部に分布するつる性の多年草です。見た目は近郊の山野に生息するヤマノイモ(Dioscorea japonica Thunb.)やナガイモ(Dioscorea polystachya Turcz.)によく似ています。果実が赤色の液果となり、かつては別属のTamus communis L.とされていましたが、2002年にヤマノイモ属に含められました。

ディオスコレア・コムニスの芋(ヤマノイモ属の場合、茎と根の中間であり担根体と呼ばれます)は、ナガイモのような細長い形をしています。山科植物資料館では11月頃から出芽し、地面に芽を出すか出さないかの位置で越冬します。このため、植え替えは落葉してすぐの早い時期がよいでしょう。3月終わり頃からつるを伸ばして4~5月頃に葉腋に花序を付けます。雌雄異株で、雄株は穂状花序を出し、雌株は2、3個の花を出します。花の直径は雌雄とも5mmくらいです。花弁は緑白色で、雄花は黄ないしは橙色の葯をつけ、雌花は花びらの下が膨らみます。果実は先に書いたように赤色の液果となり(写真では赤くなる前に落ちてしまいましたが)直径約1cmです。

ディオスコレア・コムニスは有毒ですが、若芽をゆでて野菜として食べることがあります。ヨーロッパでは薬用とされます。アメリカの「医師用卓上参考書(PDR for Herbal Medicines Third Edition)」には「Black Bryony」として収載されています。これによると、Black Bryonyはディオスコレア・コムニスの根です。シュウ酸、粘液、精油、フェナントレン誘導体、ステロイドサポニン(ディオスゲニン)を含みます。証明されていない利用法として、打撲、筋挫傷、痛風、リューマチの症状に用います。また催吐剤として用います。他に、頭皮の血行促進を期待してヘアトニックとして用います。一方で、新鮮な植物に触れると発疹やはれを起こします。内用すると口や喉、胃腸に激しい炎症の徴候を誘発します。これらの記載から、専門家の指導がなければ危険で、一般には利用できないことが分かります。