BOTANICAL

植物紹介
植物紹介

ダイフウシノキ(アカリア科)

Hydnocarpus anthelminthicus Pierre ex Laness.

ダイフウシノキ


ダイフウシノキは東南アジアに分布する常緑高木です。エングラーやクロンキストの分類体系ではイイギリ科とされましたが、APG分類体系ではアカリア科になります。アカリア科の植物は日本ではほとんど馴染みがなく、比較的有名なのがこのダイフウシノキです。他には、これもほとんど無名ですが、民族楽器やお土産の鈴として売られる、パンギノキ(Pangium edule Reinw. ex Blume)などというものもあります。因みに、イイギリ科はAPG分類体系ではほとんどがアカリア科やヤナギ科に、他の少数もいくつかの科に分割されて消滅してしまいました。ダイフウシ属Hydnocarpusはhydno(トリュフの意)+carpus(果実)で果実の形がトリュフに似ることに因みます。種小名anthelminticusは英語のanthelminticと同じで「駆虫薬」を意味します。

ダイフウシノキの花は新梢の葉腋に1個着きます。花の直径は3cmくらいで花弁が5枚。雌雄異花で雄花は5つの雄しべが目立ち、雌花の雌しべは子房上位で特徴的です。結実すると、直径10cmくらいの球形で固い果実となり、中に数十個の種子を作ります。

ダイフウシノキが有名であったのは、この種子に含まれる油脂を絞って「大風子油」を得たからです。成分は主にシャウルムーグラ酸(chaulmoogric acid)、ヒドノカルプス酸(hydonocarpic acid)です。これらは抗菌作用があり、各種の潰瘍に用いられました。特にハンセン病に効果があるといわれ、かつては唯一の治療薬でした。しかし毒性が高く、筋肉注射は激しい刺激と疼痛を起こし、壊死を生じやすいものでした。経口投与では嘔吐を催したといいます。このようにハンセン病は患者の外見からくる差別に加え、治療法もほとんどないか、苦しいものしかないことで長い間恐れられました。しかし1941年に結核治療薬のプロミンがハンセン病にも効果があることが発見されてからは、様々な薬が開発されて治療法が劇的に改善され、また完治する病気となったことは皆さんもご存じの通りです。
ダイフウシノキの雄花
ダイフウシノキの雌花
ダイフウシノキの果実 (1981年4月 おそらくタイで撮影)
ヒドノカリン (日本新薬(株)が大正10年に発売した癩治療剤で、主成分は大風子油総脂肪酸エチルエステル)
パンギノキ(アカリア科)の果実で作られた楽器