ショウベンノキは四国(高知県南西部)、九州(大分県、長崎県以南)、琉球、台湾に分布する常緑高木です。「日本の野生植物」によると、「ふつう頂芽はできず,1対の仮頂芽から有花枝または無花枝を生ずる。」とあります。実際に観察しても有花枝は枝の先端ではなく、先端がなくなって分岐した枝の一方であることがわかります。ですが、このなくなった先端は花序が脱落したもののようにも見えます。新しい芽がどのように発生するのかというところから追跡しないと「日本の野生植物」の記述は理解が難しいものです。
葉は3小葉で1小葉の長さは10cm前後で、頂小葉は側小葉よりもやや大きくなります。不思議な和名は「小便の木」で、「春先,枝を切ると,切り口から臭気のある樹液が多く出ること」に由来します。花序は有花枝の先端に生じます。1つの花は直径約5mmで5つの萼と5つの花弁、5つの雄しべ、1つの雌しべからなります。果実は橙色の液果で、当資料館ではまれに成ります。
四国以南に分布するためここ京都の山科では葉が痛みます。当資料館では昔から屋外で栽培していますが、近くに大きなコルクガシが植わっていてこれが霜よけとなっていました。ところが2017年の台風21号でコルクガシが倒れてしまった時は巻き添えになって大枝が折れて幹が裂けてしまったばかりか、冬の寒さが直撃してだいぶ弱ってしまいました。その後はひこばえが伸びてきて徐々に回復し、今年は往時のようにたくさんの花をつけました。
橙色が旧枝。黄色が有花枝。白い三角が頂芽の痕跡?
参考文献
大橋広好.2016.ショウベンノキ属 Turpinia Vent.改訂新版日本の野生植物3:大橋広好 他(編).pp. 277-278,平凡社,東京.